齲蝕(むし歯)


 むし歯は、口腔内の常在菌が原因で発生します。その中のストレプトコッカス・ミュータンスという菌が、歯の表面についた糖分を分解し、不溶性グルカンという粘着性の成分を作ります。堆積したグルカン(プラーク)の中で、菌は代謝産物として酸を産生し、歯を溶かしていきます。


むし歯がエナメル質(歯の表層)までしか侵していないうちは、無症状です。ごく初期で、実質欠損を伴わないものであれば、削らずにフッ素塗布などを行い、経過観察します。清掃が十分に出来ていれば、唾液中のカルシウムが再沈着して、数ヶ月で元通りになります。また、実質欠損があってもそれがエナメル質の範囲内であれば、むし歯を除去しその場で詰めて終わりです。その際、レジン充填(白い樹脂の詰め物)を行うのが通例です。


むし歯が象牙質まで進行してくると、冷たいものを口にした時などにしみるといった症状が出てきます。このような場合、むし歯を除去した後にいきなり詰めることはせずに、外部からの刺激を遮断する歯科材料で封鎖(覆髄)して、しばらく経過観察します。症状が無くなったのを確認した上で、修復処置を行います。レジン充填や、強度が必要な場合は型を採ってインレー修復(金属の詰め物)を行います。


むし歯が歯髄にまで到達すると、何もしなくても痛い(自発痛)、状態になります。治療としては、痛みの出ている神経を麻酔下に除去(抜髄)して、神経のあった部分を消毒します。神経を除去した後の空洞の部分は、最終的にガッタパーチャという材料で封鎖(根管充填)します。その後、根管に芯棒を立てて築造し、型を採ってクラウン修復(金属のかぶせ物or金属のかぶせ物にレジンを前装したもの)を行います。


神経が死んでしまい、痛まなくなった状態です。死んだ歯髄は腐っていき、歯の根の先にある骨の一部を溶かすようになり根端病巣と呼ばれる膿の塊を作っていきます。腐った神経を除去(感染根管治療)して、膿の部分まで十分に消毒しなければなりません。抜歯を避けることができれば、根管充填して築造し、最終的にはクラウン修復を行います。


歯周病


 歯周病はむし歯と違って歯自身の病気ではなく、歯を支える組織の病気です。昔は歯槽膿漏と言っていました。軽度のものを含めると、25歳以上の国民の8割以上がかかっています。”歯周病対策なくして歯を残すことは不可能”と認知されるようになりました。


 原因は、歯の表面についた細菌の集団であるプラーク(歯垢)です。ポリフィロモナス・ジンジバリスという菌のもつ毒素により、まず歯肉に炎症が起こります。この初期段階を歯肉炎と言います。むし歯は痛みますが、歯周病は自覚症状がほとんどありません。放置していると、毒素の影響で歯と歯肉の間の溝(歯周ポケット)が深くなり、細菌がどんどん入って炎症がひどくなり、やがては歯肉の下にある歯槽骨が破壊されてしまいます。これが歯周炎です。



上記のように歯周病の原因は細菌ですが、加齢や病気・ストレスによる免疫力の低下過大な咬合力が危険因子になります。喫煙が歯周病にとってよくないことも分かっています。また、歯周病は糖尿病、脳血管疾患、骨粗しょう症、心疾患、腎炎、関節炎などと関係があるとの報告が出ています。


治療は、まず汚れを取り除くことから始めていきます。一にも二にもプラークコントロールです。と言っても、漫然と歯磨きしているだけでは無意味です。歯周ポケットにブラシの毛先を入れ、細かく振動させて、汚れを掻き出さなくてはなりません。うまくいけば数日で歯肉が引き締まってきます。


次は、歯科衛生士の出番です。ポケット内にスケーラーという器具を入れて、根面に付着した歯石を取っていきます。これをスケーリングと云います。歯肉縁下奥深くに付着した歯石は、ルートプレーニングで除去します。この際、壊死セメント質の除去と根面の滑沢化も同時に行い、根面から剥離した歯肉の再付着を図ります。(※歯周外科手術を併用する場合もあります)


智歯周囲炎(親知らず)


 親知らずとも言われる第三大臼歯は、萌出するスペースが無いため、斜めに生えてきたり、真横に埋伏したりすることが多いです。このような場合、不潔になりやすく、親知らずや隣の歯まで虫歯になったり、周囲の歯肉が腫れて痛んだり、炎症が咽喉にまで波及して口が開きにくくなったりする場合があります。抗生物質で散らすことは出来ますが、根本的な治療は抜歯することしかありません。


当院では、一般の歯科医院で敬遠される難抜歯下顎水平埋伏智歯抜歯を、紹介を受けて実施しております。


(1)局所麻酔を行い、メスで歯肉を切開します。通例、第二大臼歯の遠心に横切開、頬側に縦切開を入れます。このように粘膜骨膜弁(フラップ)を作成し、フラップを骨から剥離します。


(2)真横になっている歯が確認できました。ダイヤモンドバーで歯冠を分割し、除去します。この際、必要があれば、カーバイドバーで歯冠周囲の骨を削除します。


(3)残っている歯根をヘーベルで脱臼させ、抜去します。必要があれば、カーバイドバーで更に歯根を分割して摘出します。


(4)抜歯窩を滅菌生理食塩水でよく洗浄した後、歯肉を縫合して終了です。通例、抜糸は1週間後です。



[抜歯前のX線写真] 右下の親知らずが水平に埋伏しています。手前の歯に引っ掛かっていて、このままでは抜歯することができません。



[抜歯途中のX線写真] 親知らずの歯冠部をカットした状態です。この後、残りの歯根部分を摘出します。



顎関節症


 顎関節は、側頭骨と下顎骨で構成(右図参照)されています。この関節に何らかの障害が生じたのが顎関節症で、「口を開けづらい」「開閉時に雑音がする」「痛みがある」の3症状が特徴です。臨床的に、以下の5つのタイプに分類されています



顎関節症1型(咀嚼筋障害);筋肉の疲労が主体

顎関節症2型(慢性外傷性病変);大あくびなど、無理な開口で起こる

顎関節症3型(顎関節内障);関節円板の転位が生じている

顎関節症4型(退行性病変);骨の変形や関節円板の穿孔が生じている

顎関節症5型(精神的因子によるもの);ストレスにより増悪する


当院では病態に応じ、投薬、スプリント(夜間装着するマウスピース)、レーザーを用いた理学療法、顎の運動療法によるリハビリテーションを行っております。ただ、顎関節症は慢性疾患であるため、治療を開始してすぐに症状が改善するわけではありません。数ヶ月から半年かけて、徐々に改善していきます。(左は上顎型スプリント)


口腔粘膜疾患


 口腔粘膜の病変には、口内炎や口唇ヘルペスを始めとして、様々なものがあります。ほとんどは心配のないものですが、中には扁平苔癬、天疱瘡、白板症、紅板症など大変治りにくい粘膜疾患が存在します。また、舌癌のように、放置すると命にかかわるものもあります。


 大学病院で様々な口腔癌を診てきた経験があり、悪性腫瘍は見逃しません。

口腔癌検診も行っておりますので、ご希望の方はどうぞご相談ください。


ゴールドクラウン


 歯の全体にかぶせる歯冠修復物ですが、保険適用の金銀パラジウム合金とは違い、貴金属のみを使用(金合金にプラチナを加えたもの)したクラウンです。バイオメタルと言われる材料で、金属アレルギーが少ない歯肉に炎症を起こしにくいプラーク(汚れ)が付着しにくい、という利点があります。金属なので見た目はよくないですが、虫歯・歯周病予防の意識が高い方におすすめです。

<治療費> ※税別

大臼歯 50,000円 小臼歯 45,000円


審美歯冠修復


歯の全体にかぶせる歯冠修復物ですが、天然歯とそっくりに作ります。メタルボンドクラウンは、金属の上にセラミックスを焼き付けているので、健康保険が適用されるレジン前装冠とは違い、強度が高く、経年的な変色も少ないです。この他、冠全体が陶材でできたオールセラミッククスラウン、陶材とレジンを混ぜ合わせたハイブリッドセラミックスクラウンも作製しております。


[治療前] 上顎右側中切歯が黒く変色して目立っています。その他の歯も、詰め物(レジン)が変色して、みすぼらしい印象です。



[治療後] 上顎前歯6本をメタルボンドクラウンで歯冠修復しました。(注:ここで挙げたのは、極端な例です。1本だけの修復でも、かなりの審美性の回復が期待できます。)



<治療費> ※税別

セラミックス焼付メタルクラウン             70,000円

ハイブリッドセラミックスクラウン             45,000円

オールセラミックスクラウン                90,000円


金属床義歯


 通常はレジンで作る義歯床の部分を、金属(コバルトクロム合金)で作った入れ歯です。薄くできる(従来の1/3)ために、入れ歯特有の異物感がかなり少なくなります。さらに、保険診療では様々な制約を受けてしまう維持装置の形を自由にデザインできるので、維持装置を外から目立たないように設定できます。また、食べ物の温かさ・冷たさをよく伝えるため、義歯を入れていることをあまり意識せずに食事を楽しむことができます。唯一の欠点は、修理や増歯が難しいことです。そのため、動揺している歯があったり、顎骨が極端に痩せている方には、あまりおすすめできません。

<治療費> ※税別

片側部分床義歯                                120,000円

両側部分床義歯(クラスプ・スパー2ヶ所以下)              180,000円

両側部分床義歯(クラスプ・スパー3ヶ所以上)および総義歯      195,000円


インプラント


 虫歯や歯周病、外傷で永久歯を失うと、二度と生え代わってきません。失った歯を補う方法としては、1.ブリッジ 2.入れ歯 3.インプラント があります。

これらのうち、いずれかを選択することになります。


 インプラント治療は、歯根の部分から元の歯と同じように人工歯を再建する方法です。顎の骨に埋め込むための手術を行いますので、治療期間は他の方法に比べて長くなり、健康保険適用外なので費用も高めです。そのぶん、入れ歯と違って咬み心地がよく、ブリッジと違って両隣の歯を痛めることがありません。ただし、植立したインプラントは例えると骨に埋め込んだボルトが体の外に露出しているようなものなので、感染予防のため十分な口腔衛生管理と定期検診が必要です。それが出来ない方には、インプラント治療はおすすめできません。


<インプラント治療の手順>

(1)インプラントを埋入する場所に、十分な量の骨があることを確認します。


(2)麻酔をかけ、歯肉を切開して顎の骨に穴を掘り、人工歯根(フィクスチャー)を埋め込みます。


(3)切開した歯肉をふさいで、人工歯根が骨と結合するのを待ちます。(3〜6ヶ月)


(4)再び歯肉を切開して人工歯根を露出させ、歯肉が治癒するのを待ちます。(1〜6週間)


(5)歯の支台となる部品(アバットメント)を人工歯根に連結します。


(6)支台を形成し型を採り、それを元に人工歯を作ります。


(7)出来上がった人工歯を取り付けます。



※当院では、アストラテックインプラントシステムを採用しています。表面には、他のインプラントにはないタイオブラスト加工が施されており、骨-インプラントの結合度において、現時点で世界最高峰のシステムと言われています。

(左はサージカルトレーキット)



<治療費> ※税別

     検査・診断料                       5,000円

     骨誘導再生術(1歯につき)              20,000円

     フィクスチャー埋入手術(1歯につき)        100,000円

     アバットメント装着術(1歯につき)           50,000円

     支台形成および印象採得(1歯につき)       3,000円

     人工歯料金 :ゴールドクラウン 大臼歯 50,000円

            ゴールドクラウン 小臼歯 45,000円

            セラミックス焼付メタルクラウン   70,000円

            ハイブリッドセラミックスクラウン  45,000円

   (お支払い総額は、1歯につき、203,000円〜248,000円 になります)


矯正治療


*歯ならびが悪いと・・・?

1.食べかすがつきやすく、むし歯になりやすい

2.歯垢や歯石がたまりやすく、歯肉炎になりやすい

3.特定の歯に無理な力がかかって、歯周病の原因になる

4.食べ物を効率よく咀嚼(そしゃく)することができない

5.口臭の原因にもなりやすい

6.心理的に劣等感を持ち、人前に出ることに消極的になる

7.成長期に悪い歯ならびを放っておくと、発音が正しくできない場合がある

8.顎の骨や関節などの正常な発育が妨げられて、顔つきにも影響が出ることがある

・・・などの現象が起こります。


*歯科矯正治療とは?

 歯科矯正治療とは、歯ならびをきれいにそろえると共に、上下の歯の咬み合わせをよくすることを目的とする治療です。加えて、むし歯や歯周病(歯槽膿漏)を予防し、口元を整え、心身の健康を一段と増進させようとするものです。


*治療期間は?

 矯正治療はむし歯などの治療と違って、かなり長い期間を必要とします。人によってその期間は違いますが、少なくとも1〜2年、長い場合には5年以上かかることもあります。このように長い期間がかかるのは、顎の成長発育や歯の萌出に合わせて治療を行うからです。また、歯やそのまわりの部分に傷害を与えないように、顎の骨の中に植わっている歯を徐々に移動させようとするので、時間がかかるのです。


*通院については?

 大体ひと月に一度の割合で通院すれば十分です。しかし永久歯の生えてくるのを観察したり、適当な治療時期まで待つような場合には、3〜6ヶ月に一度くらい通院すれば十分です。とにかく約束日に通うことが何よりも大切で、これが守られないと決してよい治療成績は得られません。


*矯正治療を受けている間に注意することは?

 矯正治療を成功させるためには、指示をよく守ってください。また、矯正治療を受けている間はいつもよりも歯をよく磨くことが大切です。たとえ歯ならびが美しくなったとしても、むし歯ができてしまったら何にもならないからです。また、矯正装置を装着したり調整したりした直後の2〜3日は、歯に痛みを感じることがありますが、これは歯が動き始めるときに起こってくるもので、心配はいりません。


<治療費> ※税別

○初診時相談料   3,000円

矯正治療を始めるかどうかの相談時

○検査・診断料  20,000円

      レントゲンや口腔模型などを元に、歯や顎の発育時期や治療の難易度を診断

      具体的な治療方法や、装置を決定する時

○基本矯正料 150,000〜250,000円(比較的簡単な矯正)

           500,000〜600,000円(本格的な矯正) 

           分割払いも可(原則として2年間で3分割)

○観察・調整料   3,000〜5,000円(来院毎)


 相談を希望される方は、電話または受付にて日時を予約してください。

 (※矯正歯科のネット予約はできません)

  日本矯正歯科学会認定医 歯学博士 奥平 佐和 

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