ご存知でしょうか?重度の歯周病の人は、糖尿病に罹っている率が高いのです。

糖尿病は歯周病を悪化させる因子のひとつであることは以前から知られていましたが、同時に歯周病が糖尿病を悪化させる因子でもあることが解明されてきました。


糖尿病とは


 糖尿病とは、読んで字のごとく尿から糖が出る病気です。
しかしこれ自体は糖尿病の本質ではなく、その本態は様々な合併症によりついには死に至ることなのです。
糖尿病はコントロールすることはできても治すことはできません。
いったん下り出した坂を登ることはもうできない。
”下りの坂道にブレーキをかけて止まっている”そんなところがコントロールの実態です。
しかし糖尿病はコントロールをしっかり行い、合併症さえ併発しなければ天寿を全うできる病気でもあるのです。


糖尿病には1型と2型があります。
1型はインスリン依存性糖尿病と言われ、インスリン注射なしに生きてはいけません。
遺伝的要因もありますが、一般にはムンプスウイルス(おたふくかぜウイルス)などのウイルス感染時にウイルス性の膵炎を引き起こし、インスリン分泌を担うランゲルハンス島のβ細胞が侵され、インスリン分泌が非常に悪くなる病態です。

2型は非インスリン依存性糖尿病と言われ、必ずしもインスリンに頼らなくてもコントロール可能です。遺伝的素因がある人が長年に渡って過食を重ねた結果、膵臓のβ細胞が悲鳴をあげて「もうインスリン分泌はやめる」とストライキを起こしている状態です。
糖尿病の患者のほとんどは、この2型糖尿病なのです。


1型も2型も、糖尿病とは結局のところ、インスリンの分泌が悪くなる病気です。
では、インスリンとはどんな働きをするのでしょう?
私たちが食事をすれば糖分や炭水化物はブドウ糖となります。
このブドウ糖やアミノ酸を利用すべく、膵臓から分泌されるのがインスリンです。
すなわち、インスリンは血中のブドウ糖を細胞に取り込む働きをします。
ブドウ糖は細胞内で代謝されてはじめて、細胞が生命・機能を維持していくのに必要なエネルギーに変わります。つまり、いくら血糖があってもインスリンがなければ、私たちはエネルギーを得ることができないのです。
細胞がエネルギーを得ることができなければ、やがては細胞飢餓状態に陥ります。
せっかく血液中にブドウ糖があるのに、利用できません。(利用できないので、血糖値は高くなります)この細胞飢餓によって合併症が発症します。


つまり腎臓の細胞に栄養が回らなければ、腎臓の細胞は飢餓状態に陥り腎不全となります。神経細胞にそれが起これば神経障害となりますし、眼底の血管(網膜)であれば失明するのです。失明するような時にはもう脳の血管も侵されていて、いつ脳内出血が起こっても不思議ありません。
この腎症、網膜症、神経障害が糖尿病の3大合併症なのですが、全身の細胞飢餓ですから、あらゆる合併症が考えられます。
例えば免疫の細胞が侵されれば癌になりやすくなります。糖尿病の人は、一般人と比べて5倍癌になりやすいと言われています。
風邪もひきやすいでしょうし、最初に述べた歯周病も同様です。


歯周病との関係


 このように、糖尿病は「全身の細胞がへたる病気」です。
そうならないためには血糖値のコントロールが何より重要ですが、なんと歯周病を治療することで血糖値が下がった、という症例が数多く報告されています。
そのメカニズムが研究されていましたが、重度の歯周病で炎症細胞が産生するサイトカインのうち、腫瘍壊死因子-α (TNF-α)などがインスリンの活性を干渉していることが分かってきました。これによって血糖値のコントロールが不十分となり、合併症の有病率が高くなると考えられています。


これは、画期的な発見です。
糖尿病で投薬治療を受けている方は、ぜひ自分の口の中をチェックしてみて下さい。
歯周病で歯茎から血が出ていませんか?
もしそうなら、歯周病を治療することで血糖値のコントロールが容易になる可能性があります。今飲んでいる薬を減らせるかも知れません。
もしかしたら、食事療法だけで済むかも知れません。
素晴らしいことだと思われませんか?

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